日本のストリートビューが気持ち悪いと思わないワケと個人情報保護法との関係

Google の中の人への手紙 [日本のストリートビューが気持ち悪いと思うワケ]

ちらほらこんな意見はでていたけどもきちんとブログに記載していたのを見たのは初めてだったのでここに自分の意見を記して反論しておきます。

最初にことわっておきますが、僕は Google のことが大好きではありません(みんな大好きなの?)。でもgoogle maps(street view含む)やgmail,google appsなんかは大好きです。(やっぱり好きなんじゃないかw)

反論とか

日本の都市部の生活道路は生活空間の一部で、他人の生活空間を撮影するのは無礼です

たしかに「得体の知れない人」がうちのまわりでうろちょろしながらカメラで撮影していたら無礼というか気持ち悪いと思い通報するでしょう。しかしそれが気持ち悪いのは「得体が知れない」からであってたとえばそれが交通量測定のためですとか、町内mapを作るためですとかgoogle street viewを作るためですとかそういうことが分かっていれば何も気持ち悪いとは思わない。むしろ「いつもご苦労様です」ぐらいなもんだ。そういう意味でgoogleが事前に撮影を行っていることを明らかにしていなかったことやgoogle号を積極的に公開していない姿勢は批判されてよいとは思う。しかしそれはもう過ぎてしまったことだ。

僕らの生活スタイルは、生活空間の様子を一方的に全世界に機械可読な形で公開するようにはなっていません

反論するのもばかばかしいのですが、生活の進化というのはそういうものです。結局のところそれが法で認められている限りの世の進化には私たちが対応する必要があるのです。僕らは車が軒先までやってくるような生活スタイルじゃなかった!なんて騒いでいても仕方がないことなのです。

ややこしいことになる前に、ご自身のモラルで判断して行動してください

空き巣やクルマ泥棒が利用するかもしれないということですがそれを否定する術は確かにないでしょう。しかし以下の点からこの考えは否定されます。

  • 道具は悪ではありません、それを使う人が悪なだけです
  • 空き巣・クルマ泥棒が飛躍的に効率化するとは考えられない。

個人情報保護法との関係

で法律的にはどうなのよ?というのをひとつ。前項の話と逆転してしまうのがアレなんだけれども、結論からいうとこれ厳密に適用すると個人情報保護法23条違反なんじゃないかな。

第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/houritsu/index.html
個人情報か

第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる 氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合 することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/houritsu/index.html

日本の個人情報保護法の「個人情報」は上記二条から分かるようにプライバシー型ではなくて個人識別型なのです。その情報がセンシティブなのかどうかは関係なく個人を識別し得る情報であればそれは「個人情報」なのです。ですからgoogle street viewによって明らかにされる「住所Aの建築物外観はこう(写真)である」は個人情報といえるでしょう。住所が「個人識別要素」なのかどうかは少し議論が必要な部分ではありますが現在一般的には「個人識別要素」として認められている部分だとは思います。

個人情報データベース等か

2 この法律において「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物であって、次に掲げるものをいう。
一 特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
二 前号に掲げるもののほか、特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるもの

http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/houritsu/index.html

「個人識別要素」である「住所」で容易に検索できるわけですから明らかにあたりそうですね。

個人情報取扱事業者

3 この法律において「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし、次に掲げる者を除く。
一 国の機関
地方公共団体
三 独立行政法人等(独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十九号)第二条第一項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)
四 地方独立行政法人地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)
五 その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定める者

http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/houritsu/index.html

5号の政令の関連項目

個人情報取扱事業者から除外される者)
第二条  法第二条第三項第五号 の政令で定める者は、その事業の用に供する個人情報データベース等を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数(当該個人情報データベース等の全部又は一部が他人の作成に係る個人情報データベース等であって、次の各号のいずれかに該当するものを編集し、又は加工することなくその事業の用に供するときは、当該個人情報データベース等の全部又は一部を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数を除く。)の合計が過去六月以内のいずれの日においても五千を超えない者とする。
一  個人情報として次に掲げるもののみが含まれるもの
イ 氏名
ロ 住所又は居所(地図上又は電子計算機の映像面上において住所又は居所の所在の場所を示す表示を含む。)
ハ 電話番号
二  不特定かつ多数の者に販売することを目的として発行され、かつ、不特定かつ多数の者により随時に購入することができるもの又はできたもの

個人情報の保護に関する法律施行令

五千を超えてるのは明らかでしょう。問題は一号に該当するのか否かでしょうか。「建築物外観」が含まれていないのでちょっと難しそうです。これはカーナビの存在を立法的に解決するためにできた項目らしいので同様にgoogle street viewを解決するためにここに、「ホ 建築物外観」が追加されてもいいようなものですが今はありません。

というわけで23条違反っぽいよね

以上のことからいうとgoogle street viewは個人データを本人のあらかじめの同意なく第三者提供しているということに形式的にはなりそうです。しかし私個人の感覚からはずれているのですよね。問題は「建築物外観」と「住所」というのは当然にして結合しており容易に照合可能な公開情報なのでセンシティブ情報ではないと自分は考えている点ですね。こういった個人の感覚とずれてしまうのが個人識別型のデメリットなのかもしれません。ただしこれは個人の感覚に左右されないというメリットもあり今回の件もまさにそうなのでしょう。

まとめ

法律的には怪しい気がするけれども個人感覚的には無問題なのでgoogleさんがんばってくださいです。あ、こういう理由で違法じゃないんだよ!とかいう指摘頂けると嬉しいです。

追記(2008/08/08 14:15)

あ、識別できる人の顔が映ってるとか車とかは個人情報保護の観点からも・倫理的にもまずいと思いますよ。特に家の中にいる人の顔が識別できちゃっている場合。通行人の顔はそれを検索可能にしていないので微妙な感じはしますけど。