ブログ主のIP晒しは通信の秘密侵害についての再まとめ
経緯
いろんなところに飛び火してそれぞれのコメント欄でやりとりしていたので今何が争点になっているのか?というのが分かりづらくなってきたので軽くまとめてみますね。
自分のブログ中の関連エントリは以下
特定電気通信と通信の秘密とはてなアイドルと - へぼへぼプログラマ日記
特定電気通信の通信の秘密に関するまとめ - へぼへぼプログラマ日記
otsuneさん、そりゃあんまりだよ… - へぼへぼプログラマ日記
飛び火したエントリは以下
ブログ管理者が、コメント者のIPを晒す行為について - 『書物の迷宮』予告篇
http://d.hatena.ne.jp/steam_heart/20080710/p3
2008-07-10
IP を晒しても通信の秘密を侵害しない理由 - SiroKuro Page
「IP晒しが犯罪かどうか」問題は奥村弁護士に聞くのが一番早い気がする - 見ろ!Zがゴミのようだ!
この中できちんと論理を組み立てて反論していただいているのはGavagai(id:steam_heart)さんところとsol1og(id:sol1og)さんのところだったりします。
争点
主に争点は二つあるようです。
1. ブログ主はコメントの発信者からみて受信者である
これは、id:steam_heartとid:sol1ogのお二人ともに共通する論理。
この場合、じゃあ受信者ってのは誰よ、ということになるが、日記書いている人じゃないんだろうか。他に特定可能な受信者、もないし。コメント欄なんだし。もし受信者が居ない、ってことになれば、それは通信じゃなくて公開、と判断するだろうから、通信そのものが成り立たない。
http://d.hatena.ne.jp/steam_heart/20080710/p3
ブログ主は、発信者からみて
「当該情報を不特定多数の者へ送信する作業を行うことのみ」を要求している相手ではないし、
むしろ不特定多数の中の主たる送信先であると考えます。
2008-07-10
私の解釈
争点1
コメントの受信者はブログ主ではなく不特定多数です。これに関する説明は以下の判例中の裁判所の判断部分がとても分かりやすいので引用します。
一般に、インターネットを用いて情報発信をする際には、経由プロバイダを介してインターネットに接続し、ウェブサーバ上の記録媒体に情報を記録し、あるいはウェブサーバの送信装置に情報を入力することによって、当該情報をインターネット上で閲覧可能にする、という方法が採られる。
この場合、ウェブサーバの記録媒体ないし送信装置に情報を送信する必要があるが、この情報送信は、飽くまで発信者が不特定多数の者に対し情報を送信するためだけに行われるものである。ウェブサーバに要求されている役割は、あくまでも当該情報の通過点の1つとして当該情報を不特定多数の者へ送信する作業を行うことのみであり、ウェブサーバないしはその管理者が当該情報の最終的な受け手となって、自ら当該情報を利用することは想定されていない。
すなわち、発信者からウェブサーバへの情報の送信は、この部分だけを取り出して見れば、1対1の通信となるが、それだけでは独立の通信としての意味を有するものではなく、発信者から不特定多数の者へ情報発信を行う過程の不可欠な一部分としてのみ意味を有するものである。
したがって、発信者からウェブサーバへの情報の送信とウェブサーバから不特定多数の者への情報の送信を、それぞれ別個独立の通信であると考えるべきではなく、両者は一体不可分であり、全体として1個の通信を構成すると考えるのが相当である。
そして、両者が一体となって構成された1個の通信は、発信者から不特定多数の者に対する情報の送信にほかならないものであるから、これが「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」であることは明らかである。
したがって、発信者からウェブサーバへの情報の送信は、発信者から不特定多数への情報の送信という「特定電気通信」の一部となると解するのが相当である。
日本ユニ著作権センター/判例全文・2003/09/17
争点2
たしかにこの争点は難しいです。ともすれば立法論に逃げたくなるような問題です。法解釈論的な私の論理は以下のコメント欄において記載していました。
はてながそもそも日記管理者にIPアドレスを知得させているのが正当業務行為としてみとめられる理由としてはSPAM等の対応管理業務を委託しているからですよね。自分はそもそもここにも問題があると感じておりますが、それが認められるとした場合、日記管理者は電気通信事業者であるはてなからの管理業務委託をうけており、その範囲内ではてなの取り扱い中に係る通信の秘密を知得したと考えるべきではないでしょうか。そしてそれにより日記管理者ははてなと一体と見ることができ、はてなと同等の通信の秘密に関する守秘義務を負うべきではないでしょうか。
もし、それが認められないとすればそのことをもってはてなが日記管理者にIPアドレスを知得させているのはやはり(はてなが)通信の秘密を侵している(窃用)といえないでしょうか。そもそも日記管理者にIPアドレスを知得させる必要性が技術的にも絶対とはいえないわけで。(SPAM対策ならはてなが独自にやればいい)
特定電気通信の通信の秘密に関するまとめ - へぼへぼプログラマ日記
苦しいですかね?もしこの解釈が認められないと多くの人が感じるか司法が判断するのであれば、、、。という前提で次回エントリはこの問題についての立法論的な話をしたいと思います。表題は「通信の秘密の空白地帯について」あたりでしょうか。
まとめ
なんというか疲れました。自分なりの解釈を再度まとめてみましたが、読者のみなさんはみなさんなりの解釈をして行動をすればよいと思います。また、上記の争点についての再反論や新たな争点の提起や間違い指摘ありましたら歓迎します。